こんにちは!歯科医師の桒原です。
3月に入り少しずつ暖かい日が増えてきましたね。春の訪れを感じますがみなさんいかがお過ごしでしょうか?
虫歯ではないけれど、歯の一部が欠けてしまうことがあるのをご存じでしょうか?
「Tooth wear(歯の摩耗)」という状態で、特に歯の根元付近(歯と歯茎の境目)に欠損が見られることが多くあります。
この欠損は、歯科用語でNCCL(Noncarious Cervical Lesion)として知られていますが、今回はそのNCCLについて少し解説します。
NCCLの原因とは?
NCCLが発生する原因はさまざまで、いくつかの要因が重なることで進行します。主な原因としては次のようなものがあります。
・強い力での歯磨き:
歯ブラシを強く押し当てることで、歯が摩耗します。
・研磨剤入りの歯磨き粉の使用:
研磨剤が含まれている歯磨き粉を使って磨くと、歯の表面が削れやすくなります。
・酸蝕:
食べ物や飲み物の酸が歯を溶かすことがあります。
・歯ぎしりやくいしばり:
これらの行動によって歯に過度な圧力がかかり、欠損が進行することがあります。
以前は、NCCLの主な原因は歯ぎしりやくいしばりなどの咬合力によるものだと考えられていましたが、最近の研究では、実際には強い歯磨き圧や研磨剤を使ったブラッシングが大きな要因だとする意見が増えています。
NCCLが進行するとどうなる?
NCCLが進行すると、冷たい水や風がしみるなどの知覚過敏の症状が現れることがあります。欠損の大きさに関係なく、人によって症状の感じ方は異なります。欠損が大きくても無症状な人もいれば、小さな欠損でも強い痛みを感じる人もいます。
虫歯ではないため、日常生活に支障がない場合は経過観察が可能です。ただし、知覚過敏がひどい場合は、知覚過敏を抑える薬剤を使うことがあります。最近ではさまざまな薬剤が開発されており、症状に合わせて適切な治療が行われます。欠損が進行しすぎると、プラスチックレジンを詰めることもありますが、欠損が大きくなる前に対処することが重要です。
NCCLの予防と治療
NCCLの治療には、原因を取り除くことが非常に大切です。まず、歯磨きの方法を見直し、強く磨かないようにしましょう。歯ブラシはペンを持つように軽い力で握り、優しく丁寧に磨くことを心がけましょう。また、研磨剤を含む歯磨き粉の使用を避け、毛先が柔らかいブラシに切り替えることも有効です。
日々の歯磨き習慣を見直すことで、NCCLの予防は十分に可能です。もし、自分の歯にNCCLの兆候があると感じたら、早めに歯科医師や歯科衛生士に相談することをお勧めします。
NCCLに関する情報を改めて理解し、予防や治療を進めることが大切です。お口の健康を守るために、今一度ブラッシング方法を見直してみてくださいね!