こんにちは、歯学博士の黒坂です。今年は暖かい秋でしたが、寒い日が増えてきていよいよ冬が近づいてきましたね。寒暖差が激しいので、体調管理に気を付けていきましょう。
みなさんは「歯列接触癖」という言葉をご存じでしょうか?TCHとも呼ばれ、口腔トラブルのもとになる癖で、近年注目をあびています。なかなか自覚しにくく、気づかないうちに色々な口腔トラブルを起こしている可能性があることが分かってきました。
今日は、そんなTCHについてお伝えしていきます。
1, 歯列接触癖(TCH)とは?
本来、ヒトは口を閉じている安静時に、上下の歯が2~3ミリ離れています。しかし、何もせず口を閉じている状態でも、上下の歯が常に触れている状態・習慣のことを「Tooth Contacting Habit(歯列接触癖、以下TCH)といいます。
何もせず口を閉じている時にも上下の歯が接触しているのが正しい状態と思っている方が意外に多いのですが、本来は唇を閉じていても上下の歯の間に2~3ミリの隙間ができているのが理想の状態です。下顎は顎関節でぶら下がっている状態で、筋肉に力が入っていなければ、歯と歯が離れているのが自然です。会話や食事の際に歯は接触しますが、通常上下の歯が接触しているのは、1日のうち10~12分程度と言われています。
ところが、TCHの方は長時間軽く歯と歯を接触させている状態となり、歯ぎしりや噛みしめのように強い力はかかりませんが、歯を接触させるために、顎周辺の筋肉がずっと収縮した状態が続きます。軽い力のため、自覚のないまま長時間続けてしまうケースも多く、顎周辺の筋肉が痛みはじめたり様々な不調の原因となってしまうのです。
2, TCHによる影響は?
1 顎関節症
顎関節症患者の60%がTCHの傾向にあるという調査結果もあり、顎関節症でない方と比較してTCHの頻度が約3倍にのぼることも報告されています。
2 感覚異常
歯を支える非常に繊細な歯根膜がずっと押され続けることによって、嚙み合わせの違和感や知覚過敏などの感覚異常を引き起こすことがあります。
3 その他
歯周病を悪化させてしまうケースや、入れ歯を支える粘膜が常に押されるため、痛みの原因になることがあります。
3, TCHが引き起こされる原因
現代人は、スマートフォンやパソコンなどを使用するため、その操作時の姿勢の影響があります。下を向く作業が多いなど、前屈姿勢をとると、下顎は自然と閉じる方向に向かいやすくなるため、姿勢が悪いとTCHになりやすくなる可能性があります。
また、ストレスも一つの要因です。ストレスを感じると、交感神経系の活動が優位になり、顎に力が入りやすくなってしまいます。TCHに限らず、つい強い力で噛みしめをしてしまう人にもいえることです。かみ合わせに違和感があり、ずっと気にしていることが逆にストレスとなりTCHを引き起こしてしまう人もいます。かみ合わせは歯科医院でチェックしてもらうことができるので、ぜひ歯科でご相談ください。ストレスの原因を解消して、リラックスをすることがTCHの改善にも有効です
4, TCHの改善方法
「理想の状態は安静時に上下の歯に2~3ミリの隙間がある必要がある」「TCHは身体によくない」ということを知ることがとても大切です。自分にTCHの癖があるのか、どれくらいの頻度で歯と歯が接触しているかという自分の状況を把握することが重要です。
<改善策>
・深呼吸をしてみましょう
仕事や家事の合間など、歯が接触していると気づいたときに積極的に深呼吸してみましょう。深呼吸をすることで、身体が伸び、歯と歯の間に隙間が生まれます。深呼吸を繰り返すことで、心身ともにリラックスする効果があります。
・付箋や紙に書いて貼る
普段目に付く場所に「リラックス」「歯をかみしめていないか?」などの言葉を、付箋や紙などに書いて貼ってみましょう。それを見るたびに状態をチェックし、歯が接触しているようなら離すということを繰り返す方法があります。長期間貼っていると見慣れてしまうので、短期集中的に行うと効果的です。
まとめ
現代は、忙しくストレスが多い社会であったりします。普段から、ご自身の状態をこまめにチェックしながら、定期的に深呼吸を取り入れることによって、TCHの改善や気持ちのリラックスにも繋がっていくので、ぜひ新たな習慣として試してみてください!