皆さんこんにちは、歯学博士の黒坂です。今年の夏も暑いですね。外が暑いので家の中で過ごしていると運動不足になってしまいそうですね。適度な運動を心がけながら、この暑い夏を乗り切っていきましょう!!
さて、みなさんは歯科医院を久しぶりに受診した時やメンテナンス時に、「お口の中全体のレントゲン写真を撮りましょう」「1年に一度くらい、定期的にお口の中のレントゲン写真を撮りましょう」と言われた経験はありませんか??
「あ!あるある!」と思われた方、または「いつもレントゲン写真撮らされるの嫌なんだよなぁ・・」と思った方もいらっしゃるかと思います。「嫌だな・・・」と思われた根底には、レントゲン撮影による被曝量を心配されているからかと思います。
そこで、今回は歯科放射線量について詳しくお話しさせていただきます。このブログが少しでも歯科レントゲン撮影へのご理解に繋がればと思います。
1、歯科医院で撮るレントゲンは安全ですか?
歯科においてなぜレントゲン写真を撮るかというと、肉眼で見ることができない硬組織(歯、骨)の情報を得るために撮影します。歯科医院で撮影する大きなレントゲン写真(パノラマ)もしくは小さなレントゲン写真も、実はその放射線量はほぼ同じです。
*口内法 (小さなレントゲン写真)・・・0.01~0.03 mSv
*パノラマ(大きなレントゲン写真)・・・0.02~0.03 mSv
集団検診で撮影する胃のレントゲン写真1枚は約 4.1mSv なので、その100~400分の1 程度で、自然界から1年間に受ける放射線(約2.1 mSv)のおよそ40~100分の1程度です。
これらのことから、歯科医院で撮影するレントゲン写真の安全性は高いといえます。また、パノラマ撮影法は口内法とほぼ同量の線量で多くの情報を得ることができるので、初診時に撮影のご提案をさせていただいています。
方法 |
部位 |
放射線量(mSv) |
口内法(小さなレントゲン写真) |
歯 |
0.01~0.03 |
パノラマ(大きなレントゲン写真) |
歯 |
0.02~0.03 |
歯科用CT |
歯 |
0.1 |
医科用CT撮影 |
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6.9 |
集団検診 |
胸部 |
0.05 |
|
胃部 |
4.1 |
レントゲン撮影 |
胸部 |
0.065 |
|
胃部 |
2.0 |
出典:国立大学研究開発法人 量子科学技術研究開発機構「放射線被ばくの早見図(2018年5月改訂版)」 https://www.qst.go.jp/uploaded/attachment/22422.pdf
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2.防護エプロンにはどのような効果があるか?
歯科レントゲン写真を撮影する際に用いる防護エプロンには鉛が入っています。撮影時に防護エプロンを着用することで、臓器への放射線被曝をほぼゼロにすることができます。放射線に過敏な部位(肺、胃、腸、精巣、卵巣など)を覆う形で防護エプロンは設計されています。
また、防護エプロン以外にも、レントゲン室の壁やドアの中には鉛が使用されており、外部に放射線が漏れないように設計されています。
3.妊娠している時のレントゲン写真は安全か?
妊娠初期を含めた全期間を通じて、歯科医院で撮影するレントゲン写真は安全と言われています。歯科医院で撮影するレントゲン写真の放射線量は極めて低い上に、撮影部位は歯であり、腹部は鉛の入った防護エプロンで守られているからです。
4.身の回りの放射線
実は、私たちの身の回りには、自然界からの放射線が存在しています。目には見えませんが、私たちの身体は常に地面や食物など自然界からの放射線を受けています。
一人当たりの自然放射能(年間) |
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放射線量(mSv) |
世界平均 |
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2.4 |
(内訳) |
宇宙から |
0.4 |
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大地から |
0.5 |
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大気から |
1.2 |
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食物から |
0.3 |
日本平均 |
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2.1 |
東京・ニューヨーク間(往復) |
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0.2 |
ブラジルのガラバリ市の自然放射線量(年間) |
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10 |
上の図にもありますが、実は食物(お水、ほうれん草、牛肉、お茶など)からも微量に摂取しているのです!ちょっとビックリですね。
また、微量の放射線は温泉でも利用されています。ラジウム温泉、ラドン温泉がこれにあたり、有馬温泉(兵庫県)、三朝温泉(鳥取県)、玉川温泉(秋田県)など日本各地にあります。
まとめ
私たちは地球に生活している中で、知らず知らずのうちに自然放射線を受けています。歯科レントゲン写真は人工放射線の中に含まれ、口内法は約0.01mSv、パノラマ撮影は約0.03mSvと、自然放射線一年分に比べて極めて少ない値です。レントゲン写真から得られる情報は、歯科治療において大変有用なものです。
当院では、不必要なレントゲン撮影は行わないようにしており、良い治療を行うために必要最低限の範囲でご提案させていただいております。それでも、妊娠中の方やご不安のある方もいらっしゃるかと思います。ご不安のある方は、お気軽に当院スタッフにご相談ください。