こんにちは、歯学博士の黒坂です!今年は梅雨入りが例年より早く、ジメジメした日が続いていますね・・・今月も雨にも負けず、頑張って行きましょう!
今回は、歯が抜けた部分についてのお話をします!
みなさんご自身のお口の中の歯の本数はご存知でしょうか?基本的に、親知らずを除く上下14本ずつ、合計28本の歯があります。抜歯の経験がある方は28本よりも少ない本数だと思います。
抜歯後、失った歯の部分に何かしらの処置をされましたか?歯科治療で「補綴」(ほてつ)という言葉をよく耳にすると思います。補綴とは問題のある部分を人工物で補うことです。つまり「欠損補綴」とは、歯を失った部分を人工物で補い、噛み合わせを回復させることをいいます。今日は、「欠損補綴」について詳しくお話ししていきますね。
欠損したままだと、どうしてダメなの?
先ほどお話したように、ヒトの歯は親知らずを除く上下14本ずつ、合計28本の歯が全て揃っているのが理想的な状態です。しかし、部分的に歯を失っている状態で当院にこられる方もいらっしゃいます。抜歯になった原因は、重度の虫歯や歯周病、根が割れてしまった等、様々な理由によるかと思います。
実際、奥歯が1本抜歯になり欠損したとしても、大きく口を開けなければ見た目に違和感もなく、食事も会話も不自由ないかもしれません。むしろ痛みを伴っていた場合、痛みから解放されて喜ばしいと思う方もいらっしゃるかもしれません。また、お仕事等が忙しく、「歯科医院に通院する時間がない!」という理由から放置してしまう方がいらっしゃるのも現状です。
しかし、そのままにしておくと様々な問題が出てきます。それはすぐに起きるものではありませんが、じわじわと時間をかけて、最終的に大きなトラブルとなってくる可能性があります。歯は1本1本に役割があり、それぞれが役割を果たすことでお口全体が機能し、バランスが取れているのです。
それでは、歯の欠損が年月をかけて、口腔内全体をどのように悪化させてしまうかをみていきましょう。
〜機能面〜
対合歯の挺出 (噛み合っていた歯が、抜けた歯のスペースに伸びてくる)
抜歯により元々噛み合っていた歯が刺激を受けることがなくなってしまうと、空いたスペースに伸びてきてしまいます。長い年月をかけて反対の歯茎まで伸びてきてしまうこともあります。歯が伸びることによって露出してしまった歯根はエナメル質に覆われておらず歯の中でも比較的柔らかい組織なので虫歯になりやすく、知覚過敏の症状を引き起こしやすい部位でもあります。
隣接歯の傾斜 (隣の歯が抜けた歯のスペースに動き、傾いてくる)
例えば5番目の歯を抜歯してそのまま放置した場合、6番目の歯が手前に傾いてきます。そのまま長期間放置しておくとさらに奥の歯も傾いてきます。傾いてしまった歯を元に戻し、正しいスペースに戻すためには全体的な矯正治療が必要となります。
噛み合わせの変化
対合歯の挺出、隣接歯の傾斜により噛み合わせのバランスが崩れ、不調和が起こります。噛み合わせの変化により顎の位置自体が偏位し、顎関節の症状が出る場合もあります。
歯の破折
人の口の中には上下左右2本ずつ、合計8本の大きな奥歯(大臼歯)があります。大臼歯はお口の中で一番力がかかる部位で、一部の噛み合わせがなくなることによって、他の残った大臼歯に過度な負担がかかり、歯が割れてしまうことがあります。
〜生活面〜
姿勢の変化、体の不調
噛み合わせの変化から顎の位置にズレが生じ、頭蓋骨の位置にまで影響を及ぼすことがあります。頭は体の中で一番重く、頭蓋骨の位置に偏りが生じると、重い頭を支えるために一部の筋肉が緊張し肩こり、首こり、背中の張りなど、体のだるさが生じる場合があります。姿勢の悪化にもつながります。
咀嚼障害
噛み合わせの変化により食べ物を上手く咀嚼できない状態が続くと、胃腸に負担がかかります。
滑舌が悪くなる
歯のない部分から空気が漏れ、発音が不明瞭になることがあります。
〜審美面〜
見た目が悪くなる
機能面でお伝えした歯の挺出、傾斜により、見た目が悪化します。
歯茎の位置が下がる
歯の根の周りで歯を支えていた骨(歯槽骨)が機能しなくなり、高さ・幅共に骨量が減少してしまいます。すると歯槽骨の周りにある歯茎の位置も下がります。
顔の輪郭が変化したり、シワが増える
歯の喪失、歯槽骨の減少、歯茎の低下によって頬がこけて見えてしまうことがあります。また、前歯部の場合は口元のボリュームが減り豊麗線が深くなります。年齢よりも高齢に見られてしまう可能性があります。
以上、機能面、生活面、審美面から分析してみました。みなさんどう思われましたか?
もし「抜歯後そのまま放置してしまっている…!」と心当たりのある方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください!!また、当院では初診時にお口全体の大きなレントゲン写真を撮らせていただき、最初に今のお口全体の状況をご説明させていただいています。その際に、疑問や不安なことがあれば是非ご相談いただき、みなさんが理想と思うお口に近づいていけるよう、一緒にお手伝いができたらと思います!